ちょっと空いてる時間にサラッと眺めることができる、答えがすぐに分かる宅建過去問です。平成9年(1997年)権利関係の過去問を見ていきます。
宅建過去問(平成9年)権利関係
〔問1〕Aが,Bの代理人としてB所有の土地をCに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,Bは,Aに代理権を与えたことはなく,かつ,代理権を与えた旨の表示をしたこともないものとする。
× 契約は,B又はCのいずれかが追認したときは,有効となる。
× Aは,Bの追認のない間は,契約を取り消すことができる。
× AがBに対し追認をするかどうか確答すべき旨催告し,Bが確答をしないときは,Bは追認を拒絶したものとみなされる。
〇 Bが追認を拒絶したときは,Aは自ら契約を履行する責任を負うことがある。
〔問2〕A及びBは,共有名義で宅地を購入し,共有持分の割合を,Aが1/3,Bが2/3と定めたが,持分割合以外には特約をしなかった。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
× Bは,Aの同意を得なければ,自己の持分を他に譲渡することはできない。
〇 Bが自己の持分を放棄したときは,Aが単独所有者となる。
〇 Bは,その宅地の全部について, 2/3の割合で使用する権利を有する。
〇 Bだけでなく,Aもその宅地の分割請求ができる。
〔問3〕建物の賃貸借契約における賃借人Aに関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
〇 Aが,建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合,Aは,その必要費の償還を受けるまで,留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
× Aの債務不履行により建物の賃貸借契約が解除された後に,Aが建物の修繕のため必要費を支出した場合,Aは,その必要費の償還を受けるまで,留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
〇 Aは,留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に,当該建物に引き続き居住したとき,それによる利益 (賃料相当額) は返還しなければならない。
〇 Aは,留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に,さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき,その必要費のためにも留置権を行使できる。
〔問4〕AがBに対して有する 100万円の貸金債権の消滅時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
× Aが弁済期を定めないで貸し付けた場合,Aの債権は,いつまでも時効によって消滅することはない。
× AB間に裁判上の和解が成立し,Bが1年後に100万円を支払うことになった場合,Aの債権の消滅時効期間は,和解成立の時から10年となる。
〇 Cが自己所有の不動産にAの債権の担保として抵当権を設定 (物上保証) している場合,Cは,Aの債権の消滅時効を援用してAに抵当権の抹消を求めることができる。
× AがBの不動産に抵当権を有している場合に,Dがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは,Aがその手続に債権の届出をしただけで,Aの債権の時効は更新される。
〔問5〕Aが,AのBに対する金銭債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
〇 Aは,Cへの譲渡について,Bに対しては,Aの口頭による通知で対抗することができるが,第三者Dに対しては,Bの口頭による承諾では対抗することができない。
〇 Bは,譲渡の当時Aに対し相殺適状にある反対債権を有するのに,異議を留めないで譲渡を承諾したときは,善意のCに対しこれをもって相殺をすることはできないが,Aが譲渡の通知をしたに止まるときは,相殺をすることができる。
× Aが,Cに対する債務の担保として債権を譲渡し,Aの債務不履行があったとき,CからBに対して譲渡の通知をすることとしておけば,Cは,Aに代位して自己の名義で有効な譲渡の通知をすることができる。
〇 Cへの譲渡についてのAの確定日付証書による通知と,第三者Eの同一債権に対する差押命令とが,同時にBに到達したとき,Bは,Eへの支払,供託等によりこの債権が消滅していない以上,Cからの請求を拒むことはできない。
〔問6〕物権変動に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
× Aが,Bに土地を譲渡して登記を移転した後,詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で,Aの取消し後に,BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき,Aは,登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
〇 DとEが土地を共同相続した場合で,遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し,Fに譲渡して登記を移転したとき,Eは,登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。
× GがHに土地を譲渡した場合で,Hに登記を移転する前に,Gが死亡し,I がその土地の特定遺贈を受け,登記の移転も受けたとき,Hは,登記なしに I に対して土地の所有権を主張できる。
× J が,K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で,時効の完成後に,Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき,J は,登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
〔問7〕不当利得に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
× A所有の不動産の登記がB所有名義となっているため固定資産税がBに課税され,Bが自己に納税義務がないことを知らずに税金を納付した場合,Bは,Aに対し不当利得としてその金額を請求することはできない。
× 建物の所有者Cが,公序良俗に反する目的でその建物をDに贈与し,その引渡し及び登記の移転が不法原因給付である場合,CがDに対しその返還を求めることはできないが,その建物の所有権自体は引き続きCに帰属する。
〇 Eは,F所有のブルドーザーを賃借中のGから依頼されて,それを修理したが,Gが倒産したため修理代10万円の取立てができない場合,ブルドーザーの返還を受けたFに対し不当利得として10万円の請求をすることができる。
× 土地を購入したHが,その購入資金の出所を税務署から追求されることをおそれて,I の所有名義に登記し土地を引き渡した場合は不法原因給付であるから,Hは,I に対しその登記の抹消と土地の返還を求めることはできない。
〔問8〕Aが,親友であるBから,B所有の建物を 「2年後に返還する」 旨の約定のもとに,無償で借り受けた。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
× Bが,Aの借受け後に当該建物をCに譲渡し登記を移転した場合,Cは,Aの借受け時から2年間は,Aに対し当該建物の返還を請求することはできない。
× 2年の期間満了時において,Bの返還請求に正当事由がない場合には,Aは,従前と同一の条件で,さらに2年間当該建物を無償で借り受けることができる。
〇 2年の期間満了前にAが死亡した場合には,Aの相続人は,残りの期間についても,当該建物を無償で借り受ける権利を主張することはできない。
× Aは,当該建物につき通常の必要費を支出した場合には,Bに対し,直ちにそれを償還するよう請求することができる。
〔問9〕Aは,その所有する土地について,第三者の立入り防止等の土地の管理を,当該管理を業としていないBに対して委託した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
× Bが無償で本件管理を受託している場合は,「善良なる管理者の注意」ではなく,「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。
〇 Bが無償で本件管理を受託している場合は,Bだけでなく,Aも,いつでも本件管理委託契約を解除することができる。
〇 Bが有償で本件管理を受託している場合で,Bの責に帰すべからざる事由により本件管理委託契約が履行の半途で終了したときは,Bは,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
〇 Bが有償で本件管理を受託している場合で,Bが死亡したときは,本件管理委託契約は終了し,Bの相続人は,当該契約の受託者たる地位を承継しない。
〔問10〕遺留分に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
× 被相続人Aの配偶者BとAの弟Cのみが相続人であり,Aが他人Dに遺産全部を遺贈したとき,Bの遺留分は遺産の3/8,Cの遺留分は遺産の1/8である。
〇 遺留分の侵害額請求は,訴えを提起しなくても,内容証明郵便による意思表示だけでもすることができる。
〇 相続が開始して9年6箇月経過する日に,はじめて相続の開始と遺留分を害する遺贈のあったことを知った遺留分権利者は,6箇月以内であれば,遺留分の侵害額請求をすることができる。
〇 被相続人Eの生前に,Eの子Fが家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をした場合でも,Fは,Eが死亡したとき,その遺産を相続する権利を失わない。
〔問11〕Aが,Bの所有地を賃借して木造の家屋を所有し,これに居住している場合に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。
× 「土地の使用は木造3階建の家屋に限る」 旨の借地条件があるとき,借地借家法に定める要件に該当すれば,Aは裁判所に対して借地条件の変更の申立てができるが,Bは申立てができない。
× 増改築禁止の借地条件がある場合に,土地の通常の利用上相当とすべき改築についてBの承諾に代わる許可の裁判をするときでも,裁判所は,借地権の存続期間の延長まですることはできない。
〇 Aに対する競売事件でAの家屋を競落したCは,Bが土地の賃借権の譲渡により不利となるおそれがないにもかかわらず譲渡を承諾しないとき,家屋代金支払後借地借家法に定める期間内に限り,裁判所に対して,Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。
× Aが家屋をDに譲渡してもBに不利となるおそれがないときには,Dは,Aから家屋を譲り受ける契約をした後,裁判所に対して,土地の賃借権の譲渡についてのBの承諾に代わる許可を申し立てることができる。
〔問12〕家屋の賃貸人Aと賃借人Bの間の家賃に関する次の記述のうち,借地借家法及び民法の規定によれば,誤っているものはどれか。
〇 家賃の増減について特約のない場合で,建物の価格の低下その他の経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき,Bは,Aに対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。
× 一定期間家賃を増額しない旨の特約がある場合でも,その期間内に,建物の価格の上昇その他の経済事情の変動により家賃が不相当に低額となったときは,Aは,Bに対し将来に向かって家賃の増額を請求することができる。
〇 Aの家賃の増額請求について,増額を正当とする裁判が確定した場合で,Bが既に支払った額に不足があるとき,Bは,その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれをAに支払わなければならない。
〇 Aの家賃の増額請求に対し,Bが相当と認める額の家賃を提供したが,Aがその受領を拒んでいる場合に,Bが相当と認める額の家賃を供託したとき,Aは,家賃不払いを理由に家屋の賃貸借契約を解除することはできない。
〔問13〕建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
× 共用部分の保存行為については,各区分所有者は,いかなる場合でも自ら単独で行うことができる。
× 建物の価格の1/3に相当する部分が滅失したときは,規約に別段の定め又は集会の決議がない限り,各区分所有者は,自ら単独で滅失した共用部分の復旧を行うことはできない。
〇 建物の価格の2/3に相当する部分が滅失したときは,集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で,滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
× 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,規約で別段の定めをすれば,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数により行うことができる。
〔問14〕不動産登記の申請義務に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
× 建物を新築した場合,当該建物の所有者は,新築工事が完了した時から1ヵ月以内に,建物の所有権の保存の登記の申請をしなければならない。
× 所有権の登記名義人が住所を移転した場合,所有権の登記名義人は,住所を移転した時から1ヵ月以内に,登記名義人の氏名等の変更の登記の申請をしなければならない。
× 所有権の登記名義人に相続が開始した場合,当該不動産を相続により取得した者は,相続の開始を知った時から1年以内に,所有権の移転の登記の申請をしなければならない。
〇 建物が取壊しにより滅失した場合,表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人は,当該建物が滅失した時から1ヵ月以内に,建物の滅失の登記の申請をしなければならない。
〔問15〕不動産登記の申請に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
× 買戻しの特約の登記の申請は,売買による所有権移転の登記がされた後でなければ、することができない。
〇 地役権設定の登記の申請は,要役地及び承役地の双方に所有権の登記がされている場合でなければ,することができない。
× 合体による登記の申請は,既に登記された建物とまだ登記されていない建物とが合体する場合には,することができない。
× 遺産分割協議書に基づく相続を原因とする所有権移転の登記の申請は,共同相続の登記がされていない場合には,することができない。
宅建合格!過去問活用法(権利関係)
権利関係は「複雑な出題パターン」を掴むため、宅建業法は「やらしいひっかけパターン」を掴むため、この2科目は少しでも多くの過去問に目を通し、広く浅く回転させてください。逆に法令制限と税その他は「単純知識を知っているか」勝負となりますので、基本書と過去問で正確な知識を身につけることがポイントとなります。
宅建試験で最も難易度が高いのが『権利関係』です。単純暗記科目である他科目とは異なり、流れに沿って理解し、本試験で「何を聞いているのか」まで判断できる応用力を身につける必要があります。難易度は高めですが、流れに沿って一度モノにできれば、他の暗記科目よりも忘れにくいと言えます。難易度が高めと言っても、面倒なのは代理や抵当権など一部だけです。大部分は簡単です。膨大な民法から債権譲渡や寄託など、毎年数問はマイナー問題も出題されますが、そこまで勉強の手を広げる必要はありません。取れる問題だけを確実に取っていきましょう。
宅建試験の『権利関係』は民法以外に、借地借家法2問、区分所有法1問、不動産登記法1問が出題されます。借地借家法は覚えることも多いですが、必ず2問の出題が約束されている貴重なところです。ここはしっかり勉強して、最低1点、なるべく2点を確保しておきましょう。不動産登記法は簡単な問題と難問題の差が激しいので深入りせず、簡単な問題は確実に取れるよう基本だけしっかり押さえておきましょう。区分所有法は以前は難問題の宝庫でしたが、近年は驚くほど基本問題ばかりの得点源となっていますので、重要ポイントをしっかりマスターしておいてください。民法以外の4問で3点を確保できれば宅建合格は目の前です!